エッセイ

廸薫の「タカラジェンヌが日本舞踊家になったわけ」

其の十二「夢・・・のお話」

今月から、始まった「目指せ平成見返り美人!!★美しい所作と着付けのコツ講座★」は、お陰様を持ちましてなかなか好調です。 「平成見返り美人」目指して、皆で楽しく奮闘しております。美しくなる為の努力って大変だけど、目指すところが「美」なので、女性にとっては努力のし甲斐のある部分。半年後、一年後がとても楽しみです。

さて、最近少子化の煽りを受けて、廃校を余儀なくされる学校も都市や地方に限らず少なくないという事ですが、その廃校を日本文化の為の施設にしようという動きが出ているようです。少し前に、千代田区が「千代田アートスクエア」というものを計画していると日経新聞に載っていたのですが、まだ計画の段階で詳細は発表されていません。
また、20年度から私達のNPO紫薫子の会でも初申請となる、文化庁委嘱事業「伝統文化こども教室」も前年度から予算が3億増えたそうです。いずれにしても、日本文化をもう一度見つめなおそうという動きは、年々そこここに出てきており、私共にとっても嬉しい限りです。

ただ、ここで気をつけなければならない事が、このよい風潮を只の金儲けに変えてしまう輩が出てくるということです。某着付け教室は某有名俳優を広告に起用し、受講料無料を謳い文句に生徒を集め、本来着付けに必要の無い装着道具を、あたかもそれが無いと着物が着られないかの様に言いくるめて購入させたり、高額な着物や帯を売ったりしているそうですが、私にはその辺の文化的な物と経済的な物のバランス感覚が、どちらの側を重要視するかによって、そのどちらかに偏り過ぎているように思えるのです。
元来お金儲けの上手い文化人や芸術家は少なく、それがその偏りの原因の1つだとは思いますが、そのお金儲けの下手な文化人、芸術家の名前を利用して、儲け上手の輩が甘い汁を吸うという良くありがちなこの構図を何とかできないものかと思うのです。昔は儲け上手でかつ文化・芸術に理解のある粋な大尽、スポンサーがいたものですが、最近の儲け上手は、そのような感性をバランスよく持ち合わせている方が少ないようです。だから金儲けの為の金儲け・・・、マネーゲームなんて言葉が生まれてきたのでしょうね。

同じ日本人として、日本の文化を蘇らせるための本気のプロジェクトを立ち上げるには、金儲け主義だけに走らず、その本質を理解し、自分の稼いだお金が国を本当の意味で蘇らせる為に使われる事を生きがいと感じ、支援する事の出来る儲け上手が絶対に不可欠なのです。マネージャーがタレントのスケジュール管理や仕事、経費、ギャラ等の駆け引きを役割分担として請け負っているように、文化・芸術には特に、資金面を請け負ってくれる経済力という名のマネージャーが絶対に必要なのです。でなければ、どんなに素晴らしい文化人、芸術家も、特別の世界の人だけしか知らない、一般には認識されない、誰も知らない「人間国宝」見たことも無い「芸術作品」と揶揄されて終わってしまうのです。反対にそう易々と一般庶民の目に触れさすものでは無いという特別認識、今までの体制とそれに家族関係の崩壊が拍車をかけ、「人間国宝」「芸術作品」ひいては日本の伝統文化を衰退させてしまったのでは無いかと思います。

私は本来身近に有るべき日本の伝統文化の在り方を、取り戻したいと考えています。例えば老夫婦が二人きりで住んでいる古いお屋敷、跡継ぎも居らずこの先この老朽化した屋敷を如何しようかとお困りの物件、そんな畳の部屋があり、玄関、台所、庭、茶室、離れなどのある日本家屋のロケーションの中で日本文化を学ぶ「和の学校」を創りたいと考えています。ビルや洋風の建物で「和」を学ぶのでは無く、日本人の生活の中から生まれてきた日本の文化を学ぶのに、なんら不自然さを感じることの無い環境で「和の文化」を伝えていくのが、日本家屋を利用して「和の学校」創りたいと思う理由です。

広い座敷や幾つもある小部屋では着付けや、華道、書道、香道、日本画、台所では季節のお惣菜や和菓子作り、お風呂場や流しでは染色、茶室では茶道、居間ではこども達がカルタや折り紙、お伽噺の読み聞かせ、庭では樹木や石の手入れの仕方、舞台のある部屋も畳の続きの間として改装し、能や日本舞踊等を習ったり見たり、また時々落語や和妻などの催しを企画し、同時に美味しいお酒で手作りのお惣菜を楽しんだり・・・。

興味を持って部屋を覗き込んでじっと見ている子供たちと、そんな子供たちに話しかける大人たち。和の文化を中核に様々な年齢の人々が集い、広いお屋敷の様々な場所で、恰も家族のような時の過ごし方が出来る空間を作る事・・・。本当ならば親が子供に辛抱強く、一生を掛けて様々な生活の場面、場面で伝えていくべき和の心、文化の伝承は知らず知らずのうちに身についていくべき事だったはず。そんないつの頃からか、親から子供へ渡されずにこの時代まで来てしまった日本の心のバトンを、今からでも繋げていく事が出来ればと思います。これは私の夢です。

Page Top